執事と共に聖夜を。

「いただけません」


春樹はきっぱりと言った。


「お下がりは、嫌?」

「いえ。これは、貴女が持つべきものです」

「どうして?」

「貴女はご両親の形見をお持ちでない。でしたら、これは最高の形見でしょう」

「そうね」


恵理夜はあっさりと肯定した。


「でも、」


といたずらっぽく笑う。


「モノのなかに二人は居ないもの」


思い出は胸の中にある――そう言ったのだ。