「ぎりぎりセーフ、よね」


ちょっと申し訳なさそうに、恵理夜は上目遣いで春樹を見た。

しかし、春樹は驚きのあまり目を真ん丸に見開いたままみじろきもしない。


「春樹……?」

「覚えて、くれていたのですね……」


自分でも忘れていたのに。

恵理夜が、クリスマスイヴを気にしていたのはこのためだったのだ、と今更ながらに気づく。

恵理夜はそっと、重ねた手を引いた。


――そこにあったのは、立派な懐中時計だった。