「ううん、そのままで大丈夫」

「走って来られたのですか?」


あの部屋の中で付いたのだろう。

春樹は恵理夜の髪についたホコリを取りながら聞いた。


「えぇ、どうしても間に合わせたくて」

「間に合わせたい?」


恵理夜は、春樹の手をとった。

そして、その手に何かを押し付けた。

金属の固い感触。

だが恵理夜の手の体温を奪ったのか仄かに温かい。


「HappyBirthday春樹っ!」


その瞬間、居間の柱時計から0時を知らせる鐘が鳴り響いた。