ドアの向こうの言い争いは途絶える気配はなかった。

両親の手紙を思い出し、恵理夜は悲しくなった。


「どこに行っても、こんなことばっかりだ……」


ふと、良くない気配を感じた。


「春樹っ」


ドアを開けた瞬間、部下の一人が春樹に殴りかかろうとしていた。

春樹は必ず反撃してしまうだろう。

恵理夜は、とっさに春樹の前に立った。


「恵理夜様っ」

「お嬢っ」


春樹と、祖父の部下達の声が上がる。