春樹が、知恵の輪を解く隣で、恵理夜は手紙を読んでいた。

父・理一の潔い文字。


“HappyChristmasに気づいてくれたというのが最高に嬉しい。
僕の願いは、あの歌の中に。僕の祈りは、クローゼットの中に”


母・恵美子の無邪気な文字。


“私は家から、逃げられないけど、祈ることは出来る。
だから、二人であの曲を歌い続けたい。恵理夜のためにも”


極道の家に生まれたものが祈る資格はない。けれど祈り続けたい――そんな叫びを感じた。


涙がこぼれた。


「お嬢様」


春樹の手には、金属片から開放された鍵があった。


「キャビネットから、開けてみましょう」


恵理夜は、涙を拭いながら立ち上がった。