「賞賛しか、浮かんで来ませんね……」


ため息混じりに春樹は呟いた。


「春樹、チェックメイトはどこかしら」

「hの4……こちらを黒とすると、一番右の4マス目です」


恵理夜は、絨毯にそって言われた場所に立った。

そして、正面の書棚に並べられた本やカセットを丁寧にチェックする。


「これだわ」


全てが整然と収まっているが、その秩序の中に納まりつつも恵理夜をまっすぐと捕えたカセット。


「レナード・コーエンの『Hare it is』……」


カセットのケースは空だった。

そして、やはりそこからは金属片が出てきた。