「これは、チェスの棋譜です」

「きふ?」

「チェスの駒の動きを記録したものですよ。」


言いながら、春樹はチェス盤に駒を並べていった。


「8×8の盤の数字が縦軸、アルファベットが横軸です」

「春樹、チェスなんて出来るの」

「基本程度は」


綺麗だけれど、骨ばった無骨な手が駒を並び終える。


「お嬢様、貴女が解いた数字とアルファベットを言っていってください」

「まず……」


恵理夜は、自分が書き出した数字とアルファベットを読み上げた。


――白a4 黒e6
――白f3 黒d5
――白g4 黒#