「パパもママも、よくこんな凝ったことしたわよね」
春樹が、金属片を倒したり横にしたり回したりしているのを見ながら、恵理夜は呟いた。
「ご両親を、昔からそう呼んでらしたんですか?」
「え?」
「大旦那様やシラヤナギ様のことはそんな風に呼ばないでしょう」
確かに、恵理夜が普段、両親を呼ぶときは「父」「母」、砕けても「お父さん」「お母さん」だった。
「……そうね」
童心帰りに、恵理夜自身も驚いているようだった。
「さて、鍵なんですが……」
春樹は、一つ目の鍵の輪を見せた。
「外してしまって、よろしいですね」
「お願い」
――かちゃり。
わずかな音のうちにあっさりと金属の塊は、3つの欠片に変わってしまった。

