「自分を、責めてるかい?」


祖父は、厳しい目で恵理夜を見つめていた。

恵理夜は頷いていた。


「まだ、時間がかかりそうだな」


祖父の言葉に恵理夜は、目を伏せた。


「いけねぇ、こんな時間になっちまった」


胸ポケットに忍ばせた懐中時計を取りだして呟いた。


「ご予定でも?」

「ちと、寄り合いがな」


そう言って祖父は蓋付きの懐中時計を閉じた。


「素敵な時計ね」

「恵美子から貰ったものだ」


祖父は懐かしそうに時計を手で転がした。


「確か、理一も持ってたぞ。おめぇ、昔せがんだじゃないか」

「私が?」

「おうよ。恵理子が、婚約指輪のお返しにあげたものだったな。ちょうだい、って泣いてたの覚えてるぞ」


過去の事を言われ、赤面したが、急に思い出した。


「そうだ。蓋が綺麗で開くのが面白くて遊んだんだ」

「そうだそうだ」