一人になり、テレビの音が急に意識されだした。 ――相変わらず目を覆いたくなるようなニュースばかりだ。 極道でもない父は、純粋に母に惚れてこの家にやってきたと聞く。 その父が、テレビをみて悲しそうな顔をしているのを思い出した。 父は、歌がうまかった。 ニュースから目を離すと歌を歌ってくれた。 母は、ピアノが好きだった。 母のピアノで父が歌う、そんな光景を思い出した。