あたしは結婚するってことがどんなものか今もよく分からないけど。
でも
「この人って決めたらあたしはただずっとその人についていく。
それが結婚なんじゃないの?」
「そうね」
「あたしは翔さんの名誉や財産を目当てに結婚したわけじゃない」
最初はそんなところもあったかもしれないけど。
今はもうちがうって言い切れる。
「あたしは翔さんと貧乏になっても乗り越えていきたい」
まっすぐお母さんを見つめる。
やがて
「ふふ、そうよね」
笑いだした。
「それでこそ、あたしとお父さんの子供よ」
そう言ってあたしの手をぎゅっと握った。
お母さんに家庭訪問のことを相談すると快く受けてくれた。
ご飯くらい食べていけばいいのに・・残念そうに見送るお母さんに丁寧に断りをいれた。
あたしはもう北原家の人間だもん。
甘えるわけにはいかない。
「また、今度、翔さんと一緒にくるから」
「柚子。そうやって強がらなくてもいいのよ。
結婚しても柚子はあたしにとって子供には変わりないんだから」
「ありがとう」


