もっと素直になれればいいのに。


寂しいって素直に抱きつければいいのに。


でもそうしたら絶対に翔さんはお仕事を投げ出してしまうから。


おじい様のことなんてどうなってもいいって

そう言ってしまいそうだから。


「柚子」

長い手が伸びて、あたしの体を後ろから抱きしめる。


何度も

何度だって

この温もりを感じるのは好きだ。


「浮気..しないでね」

「柚子?」

「たまに電話しちゃうかもしれないけど、ちゃんと出てね」

「柚子」

「それからあたしはいつだって」


どこにいたって

翔さんの奥さんだからね。


そう言おうとしたのに


「愛してる」


翔さんが耳元でそう囁いた。