「よしっ、俺たちも行くぞ!」

「ちょ、ちょっと待って!」


車から飛び出した兄に習い、少女も慌てて車から降りる。


「ほらっ」

「う、うん」


優しく差し出された、大きな手。

激しさを増す雨風に負けぬよう、少女はその手を強く握り締めた。

優しい温もりが伝わる。


「行くぞ!」


そして2人は、洋館へと走り出した。


(でもなんだろう……

なんだか……)


走る少女の心の中に、黒いもやが広がっていく。

それが心の警鐘だということに、このときはまだ気付くことが出来なかった……