「私のこの首輪についていた小さな水晶。間違いなく城に居た時には付いていたのに……」

さっきまで鶴丸がここに居なかったのは、その水晶とやらを探していたのだろう。

「あのさ、一つ聞いてもいいかな。『陸』って誰なんだ?俺に似てるやつなのか?」

「顔は似てても、陸様はお前とは似てもに似つかないお方だ!」

……こいつ、本気で俺のこと毛嫌いしてるな。

「陸は同じ歳で、いつも一番近くに居て優しい兄みたいな存在だった。でも……十年前、私が六歳の時に流行り病でこの世を去ってしまったの」



……死んだ?



「鶴丸が言っていた水晶は陸が私にくれた唯一の贈り物なの」





『この水晶はきっとゆずを守ってくれるから。例え僕がいなくなっても、大切に持っていてほしい──』

『いなくなるなんてそんな寂しいこと言わないで!!私はどこへも行かない!!これからもずっと陸と一緒だよ!!だから早くよくなって……』





『ありがとう』





その後、陸は病が悪化して帰らぬ人となった──



私は陸のことが大好きだった。
自由に恋愛ができないこの時代で、
陸に出会えたことが私の全てだったから。

だから、父上が結婚話を持ってきても私は見向きもしなかった。

自分の結婚相手は自分で決める!!

陸よりももっともっと大好きになれる人が見つかるまで、

誰の言いなりにもならないって、

心に決めたの。