響け、空に―

「さて孝君。そろそろ面会時間が終了なんだ。君の決断を聞かせてもらえるかい?」

医師がICUに入ってきて聞いた。

あの場目を見られたかと思ったが、医師の様子からして、見ていないらしかった。


「俺は…やりたいことがあるので入院している暇なんかありません。

だから家に帰ります。」


「そうか…。じゃあ制服を持ってこよう。ただしこの点滴が終わるまではいてくれ。

孝君のお友達の君はもう帰りなさい。

もう遅いし、ご両親も心配していらっしゃるだろうから…。

孝君のお母様が君の家に連絡をしてくれて、もう迎えにいらしてるそうだ。」


「え…?」

あの母親が?

《…嫌だ、帰りたくない。一緒に帰るなんて嫌に決まってるのに。

でも、これ以上ここにいたら孝に迷惑がかかるだけ…。》


私は仕方なくロビーに向かった。

「…やっぱりね。あの人が迎えになんて、来るわけないもの。」


そこにあったのは、お手伝いさんの姿…


「いいえ。奥様たちはこの病院の正面玄関にある車の中にいらっしゃいます。どうぞ行って差し上げてください。

わたしはこのまま失礼させていただきます。」


「車…?どこかに行くの?」


「さあ、そこまでは…」

お手伝いさんは笑いながらそう言って、帰ってしまった。