一4月





新しい生活や新しい友達、これからのことへの期待に胸を膨らませる、春。

そんな中。



「…………、」

「どうしたの希々ちゃん、疲れたような顔して」



がやがやとした教室。
後ろの席の奏の声に、希々は廊下を指指す。
すると希々の隣に座る賢太は、あぁ、と少し納得したような声を上げた。



「……おぉう、」

「…ああゆうの、嫌いだもんな、希々は」

「……、」



賢太の言葉に、こくり、と首を縦に振る希々。
奏に至っては、廊下側を嫌そうな目で見つめている。

奏の視線の先には、無数の男たち。
同じクラスの奴や、クラスでは見かけない顔、上級生だと思われるネクタイの色が違う奴もちらほらといる。



「…なんか、気持ち悪い」



ぼそり、と小さく呟いた希々の言葉は、教室内のがやがやと言う小さな騒音に掻き消された。