汐莉と出会ったのは、この店を始めた春だった。
------6年前。
閉店間際に客が入ってきた。
女が一人。
その女がカウンターに座ってきた。
「…酒。」
その女は静かにそう言った。
「すいませんが、もう閉店です。」
作り笑いでそう言ってやった。
「…うりゅさいにゃあ。早く酒出せぇ!」
…どうやら泥酔してるようだ。
「…酔っぱらいに出す酒なんてねぇよ。帰れ。」
「…あんたもあたしを捨てるのね。」
「は…?」
嫌な予感。
「3年も付き合ってた男に追い出されたあたしを追い出すのね!!」
その女は泣き出した。
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