『あなたが家庭を壊せないからって、なぜ私に家庭を持たせようとするの?私は1人でいい。』
会議室へ戻ろうとした私の手を掴んで引き寄せた。
彼の胸に抱かれてた。
『人がくるよ…』
『戻ってこい、理沙。お前がそんな風にしか生きられないなら戻ってこい。』
『あなたと不倫関係に戻れって?』
『そうだ。』
はっきり言い放った彼の顔を見つめた。
『私はもう謙吾と不倫してるから』
こんな風にしか生きられないのよ。
『戻ってきて…理沙』
抱きすくめられて…唇が…触れた…懐かしい彼の香り…タバコの味のキス。
人の声がして離れたけど…私はもう立っている事が出来なかった。
涙が溢れてきて、もう…。
彼は私の手を引いて非常階段へ出た。
強く抱き締めあって…キスした…舌を絡ませて…。もう、駄目。忘れられなかった人が私を抱き締めてる。
涙目で見上げて
『謙吾と居るから、惜しくなったの?意地悪してるの?』
『普通の幸せを望まないなら…それなら俺のものになれ』
『どうして早く気付いてくれなかったの?私の気持ちに…』
彼の携帯がなってる。
『先に戻る…今夜。迎えに行く。家にいろよ』
祐治…。あなたが好きだ。あなたしか愛せないって…言ったじゃない。何度も何度も。
会議室へ戻れなくて私は1人で課に戻って机に伏せた。
私は祐治の所へ戻る。
戻りたい。
顔を上げた私の目に入ったのは、デスクマットに挟まったメモ紙。
謙吾のメールを思い出した。机を見てって。
メモを開くと、初めて見る謙吾の文字が。
[理沙へ…今日は夜会える?会ってくれたら嬉しいよ]
心は揺らがない。私は謙吾にメールした。
[ごめんね。もう会えない。彼のところへ戻ります]
謙吾…ごめんね。


