リシェナが礼拝堂で祈りを捧げている時。


王国の中心地であるベレンズで、大財閥の一人息子・ジェイスの誕生パーティーが盛大に行われていた。

ジェイス所有の広い屋敷で、舞踏会が始まる時間だ。貴族やら王族やらが広間に男女で登場する。
「ジェイス様ぁ~聞いてますか~?」
などと甘えたような声をだす美しい姫たちが両側にいても、ジェイスはただ葡萄酒を飲み干すだけだ。

サラリとした黒髪。

長くて細いが、男らしくしっかりとした手足。

相手が隠れるほどの身長。

若葉のような緑の瞳は美しいが、片目しか見ることができない。黒い眼帯が色っぽいと姫君たちは彼に夢中だったりする。
眼帯をするのは、幼いころ誘拐犯に右目から右頬まで切られてしまったからだった。

右目は完全に失明している。