リシェナを離し、ルートスはマルスを見た。
「マルスさん、あなたの多額の借金のかわりに、こちらのお嬢さんを渡してもらっていいんですよねえ?」
マルスはいまにも泣きそうだった。
リシェナはそんなマルスを見たくなくて、つい叫んでしまった。
「やめて!マルスおじさんを脅迫しないで!私はどこにでも行くから、傷つけないで!」
リシェナはマルスに駆け寄り、だいぶ痩せた手を握った。マルスと目を合わせる。
「借金が膨らんでいるの、知ってたわ。これで私が役に立つなら、嬉しいくらいよ」
言葉とは裏腹に、青の瞳から涙がこぼれ落ちた。
