「どした?」



「ごめん。。
ちょっと怖くなって…」



「怖い?」



「あたし、母親が居ない。
あたしが産まれて入れ替わりで死んだ…
父親も家族も全部捨てた。」



「あぁ。」


「だから…どういう顔をしていいかわからない。
あたしが池上仁の家族に足を踏み入れてしまっていいか…

怖いんだ。」




あたしがそう言うと、池上仁はぎゅうっと抱きしめた。



この温もり…。
それがあたしにまた光をさす。


弱いあたしはそれを求める。
ずっと求めていた安心…




あたしは、太陽の前だと弱くなるみたいだ…



カタカタと震えるあたしを、池上仁が落ち着くまで包んでくれる。




「大丈夫だ…。俺がいる。」




そう言われると、
キュッと胸の奥から込みあげる何かが溢れてくる。



初めて…



涙が出てきた。


泣かないと決めたあの日以来…




闇に溜まっていた水が…