「家ここだよ。」


「でっけぇマンションだな…」


バイクを止め、あたしをひょいと降ろす。

何度されても慣れない。



「じゃ、ありがとね。」



「おぅ。
な、明日も迎えに行くからな!逃げんなよ?」



「ふッ…考えとくよ。」



「…わ、笑った。」



「え?」



「おめぇ、笑えんだな…」


そういえば、めったにあたしは笑わない。
とこれが今、自然と笑みがこぼれた。



やっぱり調子狂うなあ。



「じゃあなっ」


そう言って、池上仁はポンポンと頭を撫でて、
バイクのエンジンをかけた。



そしてニカッと笑い、
走っていった。