放課後、あたし達は早速「檸檬」に来ていた。檸檬はもう中学の頃から来てる喫茶店。
値段も手頃で、店のオーナー、美帆さんはかっこよくて、大人だから何でも話せる。
後から考えると馬鹿っぽいあたし達の愚痴や悩みを聞いてアドバイスをくれるからよく入り浸ってしまう。
と言っても、美帆さんは真由と張れる位の美人さんだ。
スレンダーで、一言で言うと艶っぽいって感じ。いつも見たこと無い銘柄の煙草を吸ってて、謎な部分が多いから、密かに学校で色んな噂が流れてる。
未だにあたし達でさえも美帆さんは謎だ。
憧れてしまうミステリアスな雰囲気、それが美帆さんには恐ろしく似合ってた。
―――カランカラン…―――
深いチョコレート色の店内にはカウンターから軽く手を振っていた美帆さんがいた。
まだ2時になろうとしている時間だからか、あたし達の他に年配のおばあさんとおじいさんが二人で奥の窓側の席に座っていた。
「いらっしゃい、今日は早いのね」
何の曲だろう。この店に来る度あたしは考える。だけど洋楽なのは分かるけど、ヒップホップじゃない。絶対違う。
何なんだろう、ゆったりしてて、落ち着く感じ。
考え込んでいたあたしに代わって真由が、今日はテストだったから。と、答えた。