女王様と王子様

「あらやだ!」


お茶のおかわりを台所に取りに行くと、鍋と睨めっこしてたお母さんが声を上げた。
こういう時言い出すことはろくでもないことなので無視してお茶を運ぶ。


「透子ちゃん」

『……何?』

「お味噌がないんだけど…買いに行ってくれない?」

『なくていいじゃない』

「ダメよ~!お味噌がないとお味噌汁にならないもの」

『じゃあただの汁を出してやれば?そうしたら藤臣も二度と来ようと思わないわ』


…いや、あいつなら何を出されても「美味しいです」なんて笑顔で言いそうだ。
他人の機嫌をとるためになら多少の我慢はするだろうし。


「…透子ちゃんの意地悪」

『…………』


私は自分の母親が泣きそうな顔で見てくるのを無視出来るほど鬼じゃない。
本日何回目かのため息をついて、近くにあったエコバッグを持った。




─────…




『で、何であんたも一緒に来るのよ』

「だってご馳走になるんだし、僕も何かしないと」


スーパーまでの道のりを藤臣と並んで歩く。
まさかこんな日がこようとは。少し前の私は想像出来ただろうか。


『何もしないで。あんたと並んでると目立って仕方ないの』

「それは山本さんが美人だからだよ」

『知ってる』

「あはは、そっか」