女王様と王子様

「じゃーん!これ、ふじおみにあげる!」


実咲が自分の部屋から取ってきたのは虹色のビー玉。


「うわ、虹色なんて珍しいね。本当にもらっていいの?」

「うん。お土産のおれい」

『実咲、このビー玉どうしたの?』

「公園でひろった!」

『………そう』


拾ったものをお礼で渡すなんて、我が妹ながらなかなかやるな。
しかし藤臣は顔つきを変えず、ありがとう、と微笑んだ。


「ふじおみ、うれしい?」

「もちろん」

「こら実咲ちゃん、藤臣君でしょ」


居間にお茶を持ってきたお母さんが実咲を注意した。


「でも とうこちゃんは ふじおみって呼んでるよー?」

「透子ちゃんはいいの!
ごめんね、藤臣君。お客さんなんて滅多に来ないからはしゃいでるの」

「いえ」


お茶をテーブルに置いて、お母さんは食い入るように藤臣を見つめた。


「…?」

『お母さん?』

「本当に綺麗な顔。透子ちゃんにこんなボーイフレンドができてお母さん嬉しい」

『ぼ…っ!?違うってば!』

「あはは」

『あんたも否定しなさいよ!』


何笑ってんのよ!!
ていうかもう用は済んだんだからさっさと帰れ!
お母さんもお茶出す必要ないから!


「もう遅いし、よかったらご飯、食べていく?」

『は?何言ってるの?』

「だって1人でも多い方が楽しいでしょう?」

「たのしいよ!ね、ふじおみも一緒にたべよう!」

「えっと…」


藤臣はちらりと私を見た。
私は断れ!とアイコンタクトする。


「僕は「たべるの!!」

「……はい」


馬鹿藤臣。小1に勢いで負けてどうする。

あたしはお母さんが持ってきたお茶を飲んでため息をした。