女王様と王子様

すごいと思った。
自分の気持ちを偽らず、他人からどう思われるかなんて気にもしていない彼女。
そんな強い彼女が羨ましく感じた。
他人にどう見えたか知らないが、少なくとも、僕からはそう見えたのだ。




いつの間にか彼女を見掛けると目で追うようになっていた。
彼女はいつも1人だった。それでも背筋を伸ばし、真っ直ぐ前を見て歩いていた。
ただ単に興味が湧いた。
何故 そこまで迷いもなく真っ直ぐ歩ける?
1人で寂しくないのだろうか、と。




そして3年生の春。
廊下に貼り出されたクラス発表。僕と同じ紙に書かれた彼女の名前を見た。
出席番号の一番後ろの“山本透子”の文字。
単純に嬉しかった。否、嬉しいではなく、楽しみと言った方が近い感情だ。
彼女は今までにない刺激をくれる気がした。




そしてあの日。
彼女の家に奨学金の書類を届けた日。



─何であんたがここに…!?─



あの時の光景は今でも忘れない。しっかりと脳裏に焼き付いている。

彼女は秘密がバレたことに対してかなり動揺していた。
僕は反対に嬉しかった。なぜならば彼女も僕と同じだったからだ。


誰にも言えない秘密を抱えている。


この際、秘密の大きさは関係ない。その共通点さえあれば十分だ。
彼女と僕は似ている。彼女は嫌がるだろうが、僕はそう思っている。