里歌は俺の腕の中で、もう寝息をたて始めていた。今しがた、「眠れない」と言って部屋に転がり込んできたばかりだというのに。


俺の腕に、まるですがるように自分の腕を絡ませ、安心しきった顔をして…


白い頬にうすく陰る睫毛が、綺麗だと思った。


今は、今度は俺が眠るタイミングを逃してしまった。煙草を吸おうと、俺はベッドから出ようとする。



「ん……ぅ」



スタンドだけの淡い光の中、か細い声が響く。振り返ると、ほどきかけた俺の腕を離さんとして、里歌がもがいていた。


起こしてしまっただろうかと一瞬思ったが、大丈夫なようだ。里歌は俺の腕をきゅっと掴むと、再び深い眠りへと落ちていった。


…だがこのままだと、煙草が吸えない。腕を無理やり引き抜いて、里歌が起きてしまうのも面倒だったので、俺は煙草を諦めた。


ため息をつきながらベッドに戻る。こいつがうちに住むようになって、面倒が増えたな。


俺は里歌の寝顔を眺めていることにした。一定のリズムを刻む呼吸、無防備なこの顔…