――着いたのは、次の日の昼だった。
“井上”の表札を見て、あたしは俯いてしまう。
「…んだよ。怖じ気づいたかぁ?」
先生が馬鹿にしたように笑う。
「そんなんじゃないしっ」
あたしは強がる。
「…さあ、行くか」
「うん」
あたしはその扉を開いた。
「…ただいま」
「お姉ちゃん!」
二階からあたしを発見した亮介が降りてくる。
「亮介、ただいま」
「おかえりっ!!」
「ちょっと亮介…一体何の騒ぎ………紗恵」
リビングから出てきたのはお母さん。
「…ただいま」
「紗恵…」
「お邪魔します。紗恵さんの担任の柳原と申します」
「……どうぞ」
いつもとは違うテンションの母親に驚きながら、リビングへ入った。
「…あなた。学校の先生がいらっしゃったわよ」
「こんにちは。担任の柳原です」
「…どうも。……紗恵、座りなさい」
あたしたちはソファへ腰を掛ける。
「…休日まで先生に迷惑をかけて申し訳ない。うちの娘はまだまだ反抗期でね…少し落ち着きが無いのだよ」
「そうでしょうか?」
「えっ?」
父親の言葉に先生は反対するように言う。
「ただの反抗期ではないんじゃないでしょうか?…お父さん。なぜ紗恵さんが家を出たのだと思いますか?」
「なぜ?…そりゃあ親に反抗したくて…」
「違います」
「先生…」
先生は父親の目をしっかり見つめる。
「紗恵さんは、孤独なんです。寂しいんです。いつも一番安らげる家庭という場所が、紗恵さんにとっては一番苦痛な場所になってしまってるんです!」
「君に何が分かるんだ!!」
突然、父親の怒鳴り声が聞こえた。

