希はここにいない蒼にぶつぶつと文句を言いながら茨を切りわけて進んでいきました。
ずいぶん時間をロスしてしまいました。
しかし、そのとき希は塔の先端を見つけて顔を明るくしました。

「よし、見えてきた!」

「なにが?」

「……蒼!?お前どうしてここに」

蒼は腕に包帯らしきものをぐるぐると巻いていました。

「知らない。血が無くなって気を失っていたらいつの間にか茨が切れていた」

「……っち。運のいい奴」

「ふふん。俺は悪運は強いからな!」

「自慢できないね。それは不幸中の幸いってやつだね。今すぐ不幸になってくれよ」

「……なあ、俺なんでそんなに冷たくされてんの?昔はもっと優しかった気がすんだけど」

「私と姫の間に入ってくる間男に優しくする馬鹿がどこにいる?」

希はひんやりとした視線を蒼に向けた。

「幼馴染……なのに!」

「蒼はいつも幼馴染にこだわるよね。いっそ死ねば?」

「……」

蒼はがっくりと肩を下ろしました。