「茨姫ねぇ」

蒼は馬旅も疲れたなーと思いながら従者の言葉を反芻しました。

「はあ、だからその王子はその姫がいるって思い込んでいるらしくって。顔も教養も地位も頭もいいのに、本当完璧ってのはいないもんなんですねー」

「で、その姫はどこにいるんだ?」

「あの道を左に進んだ先の茨の森だとか」

「ずいぶん物騒なところにいるんだな」

「ですよねぇ。茨の森に眠りについた国があるなんて聞いた事ないですよ。あそこにあるのは茨と狼と蛇だけです」

「はははっずいぶん否定的だな」

「だってそうでしょう。王子の妄言は聞きなれていますからね」

「ほう。ずいぶん苦労してんな」

「……とにかく。早いとこその国の城に着かないと。ただでさえ遅れているんですから」

「ふうん。ちゃんと予定は余裕を持って入れないといけないんじゃなかったのか?」

「貴方のせいではありませんか!!あっちへこっちへふらふらと寄り道なんてするからっ」

「……それにしても茨姫か」

蒼はにやりと笑って馬の手綱を引きました。

「ちょっとそこまで理想の嫁を連れてくるよ!あとよろしくっ」

「え!?ちょっと、蒼王子!?蒼王子ー!!」

蒼は馬を走らせ左の道へと消えていってしまいました。