「姫!」

茅は塔の最上階に向かって声を張り上げました。

「その声は……茅王子ね!」

奏は塔のたった一つの窓から真下にいる茅を見下ろしました。

「姫、今日は翼王子と剣の試合をしました!」

「お兄様と?」

「ええ」

「まあ!それで、どちらが勝ったんですの?」

茅は悔しそうに両手をぐっと握りました。

「翼王子です。あの方は、本当にお強い」

「まあ……。気を落とさないで、茅王子」

「姫……」

茅は奏を憐憫の目で見上げました。

「姫、私は今日中に国に戻らなければなりません」

「そう……なの」

「ですが!明日の姫の誕生日は、必ず祝います!」

奏は悲しそうに目を伏せました。

「茅王子……私、明日に」

「言わないでください、姫」

茅は強い口調で奏の言葉をさえぎりました。

「呪いのことは翼王子に聞きました。この国全てが眠ってしまう呪いのことを」

「えっ……」

「だけど、姫!約束します。私は貴女だけを愛すと!」

「茅王子……」

「たとえ、今の私でなくとも、必ず姫をお救いします!生まれ変わっても、必ず姫を覚えています!」

「……」

「だから……そんな悲しそうなお顔をなさらないでください……」

「ごめ、なさ……い。ありがとう、茅王子……ありがとう、待ってるわ……」