とりあえず今は、和真から離れるのが最優先。
あたしは思い切り和真の胸を叩いた。
「ちょっ、離してよっ」
「離さねぇよ」
「はぁ?」
「離さねぇって言ってんの」
「訳分かんないっ!」
悲鳴のように声をあげて、和真から離れようとする。
でも、そんなあたしとは逆に、
抱きしめる力を強める和真。
力では男子に勝てない。
分かってたはずなのに、そんなことを忘れて、とにかく叩き続けた。
やがて、叩く隙間も与えないくらいに、力強く抱きしめられた。
「…聞いて」
耳元で聞こえる和真の切なげな声。
あたしは頷くことしかできなかった。


