家に忘れてきちゃった……。

途方に暮れていると、和真が振り向いてきた。



「どうした?」


凄く…すごーく恥ずかしかったけど、正直に言った。



「財布、家に忘れた…」


やっぱり恥ずかしくて、視線を落とした。

和真は何も言わず、あたしを押してお店の外へ出た。



「ぶははははっっ!」


外に出ると同時に、大爆笑した和真。

目に涙が溜まるほど、笑っている。


そんなに笑われたら…恥ずかしいんだけど。

今更になって、後悔の念が押し寄せてきた。



「ごめんね。だから、また今度ってことで」

「いや、いい。行くぞ」


和真は『あー、笑った』って言って、涙を拭くと、あたしの手を引いた。



「えっ、お金…」

「女を好きなだけ遊ばせる金くらい、持ってるつーの」


一歩先を歩く和真の、笑顔で自信ありげに言った一言が、やけに心にしみた。