そうして笑みをこぼしたあと、苦い顔になる。

 戒(カイ)が何故この仕事をしているのかをいくら考えても、同じ答えにたどり着く。

「そんなの、だめだよ」

 薄暗い空間に、青年の声が小さく吸い込まれた。

「……っ」

 何かを決意したのか、目尻を吊り上げ冷たくなったコーヒーを一気に飲み干して、部屋をあとにした。

 人がほとんど通らない通路は、ハンタードッグたちが集まる部屋と同様に薄暗く冷たく翼の足音を響かせる。