「あんたにだけは言っておきたかった」

 その言葉に、戒は再び驚きの表情を見せた。

 彼の表情を一瞥(いちべつ)し、烈は薄く笑んで宙を見つめる。

「どうして我々が名前を騙(かた)るのか、考えた事があるか?」

 烈(瀬木 理)はつぶやくように口を開いた。

「理由は人それぞれだ。私は、人としての自分を壊さないためだった」

 相手はクローン、同情の余地など無い──そう思えば思うほど、何故か虚無が心を襲った。

 そんな割り切った心と、割り切れない心とがせめぎ合う。