それからさらに1週間後──戒(カイ)は、モンゴルの平原を見渡していた。

 かつて恋人と訪れた、果てまで続く大草原を……。

「……」

 目を細め、その緑の大地を眺めた。

 近代化が進んでいるモンゴルだが、この草原だけは自然保護区として維持されている。

 しばらくそうして草原を眺めたあと、バギーにまたがって平原を走る。

「!」

 遠くに人影がぽつりと見え、自分と同じような物好きがいるのかと感心した。

 広い保護区の端、観光客も滅多に訪れる事の無い場所に人がいる事は驚きだ。

「!? まさか……?」

 徐々に距離が縮まり、大きくなるその影に見覚えがある。

 そんな事がある訳がない──そう言い聞かせるが、その影は戒の姿を見て手を振った。