「い゛っ!?」

 翼は勢いよく後ずさり、その光景を凝視した。

「……」

 真仁は、およそ10秒ほど戒の唇を味わうと口の端をつり上げた。

「これで君を忘れない」

 潤んだ瞳でつぶやいた。

 戒の記憶を焼き付けるために、決して忘れないように──真仁は、眼前の男を見つめる。

「男とキスしたの初めてだけど、案外いいもんだね」

 唇をペロリと舐め、しれっと言い放つ。

「……」

 翼は何も言えず、じっと立ちつくす。