ポケットの中に、自転車の鍵を突っ込んでいると、


『おはよ。ゆー君』


背中越しに聞こえてきたあいさつ。

思わずぐるっと振り返る。



「……っなんだよ。壱かよ」


『なんだよってなんだよー。ゆー君は冷たいなぁ』


「……その呼び方やめろ」


『呼び方?なんで?…あっ!未来ちゃん専用かぁ!……ってか、俺があいさつしたとき、嬉しそうにこっち振り返ったよね?誰だと思ったの?』


「専用とかじゃないから。嬉しそうでもないし、誰かだと思ったわけでもないし」


『んもーっ!ゆー君は素直じゃねーなぁ。だから未来ちゃん、他の男に取られんだよ』


「……は?」


『え?別れたんじゃないの?さっきガタイのいい、もろ、野球部。って感じの男と学校来てたぜ?』


「……別れた……?」



壱の言っていることが理解できない。

どうやら、オレにもカノジョのおバカが移ったのかもしれない。