『ゆー君!!!

今日一緒に帰れる?
未来ねっ、ドーナツ食べたいんだっ!

寄って帰りたいの!

あとねっ、明日は土曜日だよ!学校お休みだよ!!』




そう。

この、語尾にちっちゃい『つ』を付けて喋るような、無駄にテンション高いのがオレの彼女、吉田未来(ヨシダミク)。

もうすぐ16歳の高校1年生。




夏休みが始まる前の日から付き合って、もうすぐ3ヵ月になる。




「……今日はムリだよ。

予備校だから。

それにね、土曜日って言ったって受験生に休みなんかないよ」



ほら、一応オレは優等生なわけで。

別にカノジョがいないからって困るわけでもないわけで。



はっきり言ってしまうと、好きだとか、愛してる、とかがよくわからない。

そういう感情は正直オレの苦手分野なんだよね。

勉強みたいに結果が出るわけじゃないし……。

感情ってモンは形に見えないからわからない。

まあ、つまり、オレの弱点。






『そっかー。残念だね…。

お勉強がんばってね。

ゆー君ががんばってるのを未来も応援してるからねっ』




うーん……

好きだとかはよくわかんないけど。


なんてゆーか…

妹みたいだよな。


見た目は、申し分ないくらい可愛いと思うし。

客観的に見て、だけど。



とにかく。

カノジョ、というよりは、くっついてくるから相手にしてるって感じ。





じゃーねっ!と、明るく言いながら再びパタパタ走ってくカノジョを見ながらそう思う。



横では壱が、

『うらやましー!

俺もあんなふうに温厚で優しい出来る男オーラを出したらモテっかな?』

とかなんとか、わけわからないことをぶつぶつ言っていた。