とりあえず、泣かないでほしい。

吉田未来には、いつも笑っていてほしい。



そんなことを考えていると、



『今まで、ありがとう』

カノジョはそう言って、またパタパタと走って消えて言った。





ごめんね?

ありがとう?


言葉の意味が、全く理解できない。



去って行ったカノジョの後ろ姿を、オレはただ、見つめていた。





『柏木くん、きっつーい!やっぱりあの子とは不釣り合いだったんだね!』



まだ、居たのか。


そんなことを、いまだその場にいた2人組が言うもんだから、何も言い返さず、ただ一度だけ、2人をちらっと見てから教室の席に戻った。




オレはどかっ、と席に着く。

どうやら、柏木雄太という男は、周りの人から、温厚で、あまり感情をあらわにする人間ではないと認識されていたらしい。



席に着くなり、壱に

『あー、あの女の子たち。温厚で優しい柏木雄太を怒らせちゃって。普段めったに怒らない人が怒ると怖さ倍増じゃーん』

なんてどやされた。