「密着はしなくていいが、とりあえず3日後に連絡する。ここを出るなら掃除を頼む。」

「おっけっす!俺もそろそろ出るんで髪の毛一本まで痕跡を消しとくっす!
几帳面なんですよね俺って。」

左肩に大きめのショルダーバッグを引っ掛けた神野の背中に、カズヤは左手の親指だけ立てた。
神野にはカズヤの声より、カチャリというロザリオの声に対して背中越しに右手を挙げた。

以前は扉がついていたと思われる長方形のスペースから神野はコンクリートの部屋を出た。
パリパリと枯れ葉を踏み潰しながらジープに近寄り運転席へ乗る。
助手席部分にショルダーバッグを乗せキーを回すとジープ独特のエンジン音が山中に響いて、
ハンドルの下のチョークでエンジンの回転数を整えると、クラッチを丁寧に繋いでジープはアスファルトへ出た。

緩やかな山道をゆっくりと進む。
ジープの通り過ぎた後のアスファルトは枯れ葉が舞い上がっていて、まるでジープから枯れ葉が産み落とされているようにも見えた。


━ドゴゴゴォ


!!
突如の轟音に神野は反射的に身を屈めた。
体勢を戻した神野は西の夜空の赤さを見た。

「几帳面な奴の掃除の仕方じゃねえな」

ジープは枯れ葉を産み落としながら山道を下っていく。