「ちょ!やばくない!?」

萌乃が左右を見た時、

「美月!? …え、柔軟剤とかあとでいい!今どこ!?
いや!駄目!移動して!早く!!
そこに来るの!もういるの!逃げて!
…美月!?」

ケータイを耳から離したリリは可那を見た。

「やばそうね、大至急GPS!」

「うん、GPSを信じてみよ。位置出してくる。
萌ちゃん、これまだ通話になってるから聞いてて。」

萌乃は受け取った四角いケータイを目の前で祈るように両手で持ってディスプレイを見つめている。

リリはキーボードを10本の指で叩きながら自分の作業よりも遅いコンピューターにイライラしているように舌打ちをしている。

可那は靖国通りまで出て路肩に駐車した。左側の歌舞伎町はまだまだ人でごった返している。

「出たよ!!動いてるね。」

「どこに向かってそう?」

後部席に来た可那が聞いた。

「うーん…」

リリは眉間に深い皺を作りながらモニターに映るGPSの光を見ている。

「あれ?ここって…」と萌乃が言った瞬間に動いていた光が停止した。

「え!!?」

三人の声が揃った。