「絵だよ。これがお庭でこれがママとお姉ちゃん達だよ。」

この屋敷に来て1ヶ月弱、少女はすでに四女としか言葉を交わさなくなっていた。

「えー丸ばっかりで変じゃん」

「いいんだよ。これがお姉ちゃんの絵なの。」

三女が四女に見せる笑顔は、春の太陽のようなやわらかさと母親に包み込まれるような優しさがあった。
母親の記憶のない四女にとっては、夕紀の母親気取りの態度ではなく、この三女のやわらかい優しさの方が母親という存在に近いのだろう。

四女にとって姉、母、親友、この全てを持っている三女、
四女はとても大事に思っていた。
食事の時など父親や長谷川に三女と何をして過ごしたか自慢気に話す。
二人とも笑顔で頷き、彼女の成長を快く思っていた。



「みんなお姉ちゃんの絵が気持ち悪いっていうけど、私はかわいいと思うよ!」

「あはは。ありがと。」




そして今日は帰ってきた次女が四女を連れていく。

「お姉ちゃん行ってくるね!」

三女は笑顔で左手を振った。



━わたしはだれ

三女は真っ黒に塗ったスケッチブックの1ページに赤色で書いた。