「次のショーに向けて今準備してるんだけど…

当分こっちに帰って来れそうになくて…。」



母はちょっと気まずそうに話し出す。



「せっかく高校に入学したばかりで海外に転校なんてかわいそうだし…、

かといってアンタが一人暮らしなんてゾッとしちゃうじゃない!?

人見知りでお手伝いさんを頼む度に細い食が更に細くなるし…。」



「……。」



母の妙な迫力に思わず身をすくめてしまう。



「どうしたもんかと悩んでたら……

美春ちゃんから電話があったのよ!」



「母さんから…?」



時春はますます困惑顔だ。



美春ちゃんとは時春の母親で、茉百合とはとても仲の良い友人同士だった。



二人が離ればなれになってからも頻繁に連絡を取り合っていたらしい。



どうりで雪兎が時春を連絡もなしに連れてきたにもかかわらず、すんなりと受け入れたはずである。



事前にわかってたのなら教えて欲しい…。



でもこの母にそれは言っても無駄だろうな…と思い直す雪兎だった……。



「聞けばハル君が帰って来るって言うじゃない!」



時春の顔を見て、母の瞳はきらきらと輝いている。



「ハル君の家は今アメリカだし…当然一人暮らしするためのアパート探してる…なんて言うもんだから、もう、これだ…!って思ってね!?」



話し出した母の勢いは止まらない。



「じゃあウチで預かりますわ~…て、言ったの♪」



「「…………。」」



にっこり笑顔を向けられて……しばしの沈黙の後









「「………はぁ……!!?」」










二人の声が見事にシンクロした。