子うさぎのお世話

「……何か言ってごらん…」


雪兎は今だ…正面を向いたまま…、
それこそまるで白い人形のようだった。


「……英ちゃんは…わたしをわかってないね」


雪兎は微かに笑みさえ見せて、囁くように言った。


「それは…どういう事かな?」


英彰は雪兎の顔を見て、その心情を探るように聞いた。


雪兎の表情からは何もわからない……。



「わたし…そんなに弱くない。だってハルがいるから。でも……ハルがいないなら死んでもいいよ」


雪兎はソッと目を閉じてそう言った。


「君は……時春が拒絶すれば、死ぬと言うのか……?」


あまりにさらりと言う雪兎にさすがの英彰も動揺を隠せなかった。


「……それほどまでに時春に毒されていると?」


その言葉に雪兎の瞳がふ…っと開き、また英彰をじっと見つめた。


「………っ!」


瞬きもなく見つめてくる大きな澄んだ瞳は……
こちらの心を全て見据えているようで英彰の肌はゾクリと泡だった。


「わたしはハルに毒されてなんかない……。ハルが必要なのはわたしだから。代わりなんかない…」


だから…と、雪兎は言葉を続ける。





―――ガァン…ッ!!




凄まじい音と共に…保健室のドアを蹴り破るようにして……


「……雪兎に何をした……?」


冷たく睨み付ける時春が立っていた。


「………!?」


雪兎はゆっくりと起き上がると、


時春だけをひたすら見つめて微笑んだ。




「だから……。英ちゃんはいらないよ……」


一度も英彰を見ることなく、つぶやいた。