「お母さんに言ってもムダか・・・」


この家の風習を、難なく受け入れた母に、今の私の気持ちなんて分かるはずもないんだわ。


今のこの状況は、どうにもならないって事か・・・。



「そろそろ、行こうか?」


父の言葉に、渋々頷く。


そういえば、今日は、両親共に、着物を着ている。


母の着物姿はお正月に見かけるけど、父の着物姿は珍しい。


この家の様に、和風な感じの家なのかな・・・?


そんな事を考えながら、車へ乗り込んだ。


今回の婚約相手は、どうやら父の親友の息子らしい。


お互い、独立をする時の苦楽を共にしているから、特別の存在だと言っていた。


だからといって、子供同士を婚約させるなんて、なんて迷惑な話し。


車に乗っている間中、気が重く、何度もため息をついていた。