「は、離して」


腕を振りほどこうにも、佑斗の力が強すぎて、振りほどけない。


いいじゃない。


お互い、望んだ婚約じゃないのに…。


「オレは、帰さないよ」


佑斗は、腕をしっかり掴んで、じっと私を見る。


「何で?いいでしょ?婚約を破棄した方が、佑斗にだっていいじゃない」


すると、佑斗は掴んだ腕を引っ張り、私を抱き寄せた。


「お前が嫌でも、オレは婚約を破棄するつもりないから」


そう言って、佑斗は優しく私の頭を撫でる。


「嫌ならさ、オレは下で寝るから、お前がベッド使って」


温かくて、大きくて、甘い匂いのする佑斗に抱きしめられて、私は何も言えなかった。