1人の少年は多彩荘に戻って来た。
敷地内にある一本の大きな木に登り、座っても折れなそうな枝に座る。
空は、星が綺麗に輝いている。
「大切な人を殺してしまう…か…」
少年はあの路地裏の少年に言われた事を思い出す。
《黒き鮮血の風》に出逢った。
(何故だろう…助けてやりたい…。)
闇原黒也や澪原水流等の人に
この事を言った方が良いのだろうか…。
「おーい。エレキ。」
「あ…。青崎さん。」
下から見ている青年。
背中には小さな少女がいる。
青崎氷河は木を登り、
エレキの隣に座る。
「どうした?」
「え…。」
「そんな顔してんぜ?」
「そうなんですか…。」
氷河はエレキの顔を覗き込むように見る。
確かに少年には、何かがあった。
氷河は優しく頭に手を置いた。
「困ってるなら、助けになってやるよ。」
「…青崎さん。」
頭に置かれた氷河の手を握る。
氷河は少年の手が震えているのに気づいた。
「《黒き鮮血の風》に逢ったよ…。」
「!」
「助ける事はできないんでしょうか?」
「どうして?」
「能力のせいで人が苦しむ姿を見たくない…。」
全ての人が悪者だと思っているのかもしれない。
でも、善悪関係無しに救おうと思う自分は間違っているのだろうか?
変な奴だと思われてしまうのだろうか…。
「そうか…。なら、話が早い。なぁ、闇原。」
