できるわけ…ないじゃないか。


『…ダメだったね…。まあ、命は奪わないから、さ。』


やめてくれ…やめてくれ。
こんなの死んだ方がいいって…。



「!?」



澪原水流は飛び起きる。
扉に北区の中枢棟と書かれている。
代表室のソファーで寝ていたようだ。
向かい側のソファーでお茶を飲んでいる男が心配そうに水流を見ている。


「…浅斬さん。」

「大丈夫か?かなり苦しそうであったが。」

「…大丈夫。」


北区代表、浅斬 漸。
常に和服を着ていて、髪も長く後ろで束ねている。
水流にお茶を差し出す。


「そっか…ここに来て倒れたのか。」

「…やはり、まだ歩くことも大変なのか?」

「それもあると思うけど、本気で能力を使ったからかな?」

「なるほど。」


水流は落ち着いてきた。
本調子ではないものの。
そして、思い出し笑いをする。


「夢の中まで闇原が出てくるなんて末期だな、オレ。」

「お前は本当に奴の事を愛しているのだな。」

「ぶふっ!!」


水流は吹き出しそうになったお茶を必死でこらえる。
部屋の外で警備係の笑いを抑えているような声。
飲み込んで、顔を赤くして慌てて言う。


「そんな言い方、色々な語弊が生じるだろ!?人様が聞いてるのに!!」

「フム…そうか。じゃあ、好きなんだな?の方がいいのか。」

「根本的から違うって!!」


天然な漸には何を言っても駄目だ。
水流を見事に撃沈した。

漸はお茶を飲み、一息ついていると部屋の電話が鳴る。
刀を片手に電話に出る。


「どうした?…やはりか。被害者は?…そうか、良かった。今から行く。」


電話を置く。
外に行く仕度をしている。


「浅斬さん…まさか。」

「被害者は出ていないが、奴等に動きがあったようだ。」