能力に全てを任せてきた。
自分のことすら分からなくなってるのか…。

エレキがハンカチを貸してくれた。
今の高校生は女子力が高いな。


「大丈夫かよ?」

「申し訳ない。」

「本当かなぁ…。」


ハンカチは洗って返します。
やはり能力使っとこうかな?


「分かった。北区に行って、変な能力者を何とかすれば良いんだろ?」

「言っていることは間違ってないな。つまり、そういうこと。」


自分の間違いには気がついていた。
でも、踏み出す事ができなかった。


『どんな事情があるにしても、自分潰したら終わりだ。言いなりって疲れるぜ?』


思い切ってしまったのは彼のせいだ。

黒川赤次。

昨日、偶然に夜道で会った彼が言った。


『やりたいこと、してみたら?』


黒川赤次が人に好かれる理由が分かったような気がする。
決して真面目な人ではないけど。

俺は多少、救われたのだろう。

そして、今だ。


エレキは暫く何かを考えていたようだ。
こちらを見て言う。


「そうだ、色弥さん。北区に行ったこと無いから、一緒に来てくれよ。」

「…え?」


俺なんかで良いのかよって。
でも、少し嬉しかった。
こんな感じ何だか懐かしいな。

ん?
人が来る?
屋上の扉が開いた。




「口下手で呼び出し方は強引と言えど…」




聴いた事のある声だ。




「頑張ったな。」




黒川赤次だ。
不敵の笑みが妙に似合っている。